バルセロナを舞台に、幻の作家と彼の著作に出会い、その過去を解き明かそうとする少年の人生が交錯する。内戦の傷を背負った都市で困難な愛と嫉妬と復讐が渦巻く本を巡るミステリー。一見、ホラーや超常現象の類いに思われるが、複雑に絡み合った事象の謎は終末に向けて解き明かされて行く。
バルセロナに行ったことがある人、行こうと思っている人には是非読んでもらいたい。地図付き。建築系はガウディと旧市街とモンジュイックにあるミースのバルセロナパビリオン、カラトラバ、磯崎新、ミロ美術館なんかを見てまわるわけだけど、ゲルニカだけじゃない、もひとつの内戦のイメージと物語を重ねて見ると面白いのではないか?
37カ国で翻訳出版され、500万部以上を売り上げているというベストセラー。著者がほぼ同世代で、広告代理店をやめて小説家を志し、ハリウッドに渡って脚本等書きながら本書を完成させたという経緯にも惹かれる。ガウディの時代を舞台にした続編が計画されているというのが楽しみ。
古書店というと、最近はブックオフ的なものが隆盛だが、神保町辺りの古書店街は独特な雰囲気がある。大昔の雑誌のバックナンバーを当時の定価以上の値段で買い集めたり、高価な洋書を少しでも割安な中古で求めたり。本は財産なのだと思う。だからなかなか捨てられない。
先日「カンブリア宮殿」でジュンク堂書店社長の工藤恭孝氏と店員の田口久美子さんがでていたけど、どんなにパソコンやインターネットが普及しても紙の本はなくならないんじゃないかと思う。出版不況を分析した佐野眞一の「誰が本を殺したか」という本が話題になったことがあったが、本の世界も二極化、格差社会になっていくのだろう。広告で成り立つフリーペーパーやフリーマンガ、コンビニやブックオフでしか書物を手にしないような人は確実に増加しそうだ。