頭のよい子が育つ家
四十万 靖 (著), 渡辺 朗子 (著) (2006日経BP)を読む。
なんか嫌ぁ〜なタイトル。
子供のお受験に血道を上げる教育ママをターゲットにした企画本。こんな家にすれば有名中学受験に合格できる「頭の良い子」になる、と思わせるつかみ。
要点は、有名私立中学に合格した子には、親子のコミュニケーションが円滑で、リビングやダイニングなど親の目の届くところで勉強する子が多そうだ、という話。
6年間に渡り「有名中学合格家庭」200件以上を調査した中から、栄光学園、開成中学、慶応義塾中等部、フェリス女学院など11校に合格した事例を平面図とイラストで紹介しているのだが、プライバシーへの配慮とかで、実在する家庭ではなく、様々な家庭からええとこ取りしてミックスしたフィクションになっている。
分析したという調査の具体的な統計データもなければ、有名私立中学合格家庭でない家庭にはこの本に書かれているような特性は見られないのか?あるいは立派な子供部屋で勉強している子供は有名中学に合格できてないのか?といったことには触れていない、ご都合主義の恣意的なまとめ方になっている。
「頭のよい子が育つ家」は「中学受験」を礼賛するものではなく、親の言いつけを聞くのが「よい子」でもなく、自ら考え行動する、コミュニケーション力の問題であるという言い訳もされているが、「頭のよい子」や「有名中学」を連呼して子育てに悩む親にアピールしようとしていることは明らかで、不快に感じる人も多いのではないか?
編集者や執筆者側の事情を鑑みれば、世間のマジョリティが公教育の崩壊から避難して学歴社会を強化し支配層になっていくなら、そうしたマーケットに迎合するとは言わないでも、懐に入らなければ改善改革の一歩も踏み出せないといったところか。
「さおだけやはなぜ潰れないのか」みたいにタイトルで売ったろっていう風潮が最近の出版界にはあるようだし。
お二人ともええとこの育ちのようなので上流階級的な発想はベースにあり、自己肯定したい感はあるのだろう。
渡邉朗子さんは父がミースの事務所に勤めていた渡邉明次であり、ミースやコル等近代建築の巨匠の作品や父が設計した自宅、自身が設計した住宅についても語っているのだが、これらの平面図もイラストも写真もない。
これだけビジュアル情報が氾濫した昨今に不親切すぎる。建築にまず大切なのは「考え方」だが、それ以上に、それを具体的な三次元空間として如何に破綻なく実現するかというのがプロフェッションであり、同業者としても物足りない。四十万 靖さんによる調査事例の「創作」ともども説得力に欠けると言わざるを得ない。四十万 さんのお手伝いシゴトだったのかな?
ちなみに彼らが唱える「頭のよい子が育つ家」の10か条と建築学から考えた7つの秘密とは
十か条
01 子ども部屋を孤立させないようにしよう
02 家中を勉強スペースにしよう
03 おうちの中で、引越ししてみよう
04 子どもと家族の記憶に残る空間を演出しよう
05 お母さんのスペースを贅沢にしよう
06 親父の背中をみせる工夫をしよう
07 おもてなし空間を意識しよう
08 五感で感じられる空間にしよう
09 「書く」コミュニケーションを実現しよう
10 ギャラリー空間を設けよう
秘密
01 ノマド式勉強方法が実現できる家
02 気配とモノ語る壁のある家
03 風通しのいい家
04 アドムの飛ぶ家
05 豊かな想像力を育む家
06 脳とからだを同時に使う家
07 頭のよい子が育つ街・頭のよい子が育つ国
個人的には、大学まで全て国公立で塾にも行ったことがないので、ヤクザや泥棒、詐欺師や天才など多様な人種で構成される社会の縮図とも言うべき公立中学でサバイバルできるかで人は鍛えられるんじゃないかと思うのだが。。。。適応できなくて不登校になっても大検とか他の選択肢もあろう。
住宅や家族のあり方としては当たり前のことを言っているので、ご家族、親子の関係が当たり前にいっていない人には多少のヒントにはなるでかもしれません。というより、崩壊した家庭を修復するのは至難だから、家庭を築く前、子供が生まれる前に読むべきでしょう。
posted by May_Say at 16:55|
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