コンペ(competition)は競争のことで、建築では競技設計として、古くから公共的建築の建設に際して設計者及び計画案を選択する手法として行われて来た。実際に建つことを前提としないアイディアコンペもある。広告業界などでもクライアントが複数の代理店から提案を求めることはよくあるようだし、ゴルフコンペといった言葉では一般にも浸透している。
そのコンペが普通の人の住宅の設計者を選ぶしくみとして生まれ、普及してきたのには、いくつかの背景がある。
1997年にそのさきがけとなったハウスコンペは設計者が立ち上げたものだった。インターネットの普及で誰もが自身(自社)のホームページを持てるようになり、建て主も雑誌に載らない事務所の情報も得られるようになった。
しかし、ホームページを作ったからといって、設計の依頼がくるとは限らない。インターネット以前、独立したばかりの建築家が電話の前で依頼のベルが鳴るのを待ち続けたなんて逸話がパソコンに変わっただけだ。多くの設計者はいい建築をつくりたいという思いは強いが、どうやったら仕事をとれるかという営業力は弱い。
親兄弟親戚友人の住まいを足がかりに一歩を踏み出せる人もいるが、そういう境遇をもたない人もいるし、ひとつ出来たからといって、次が続くとも限らない。そういう設計者のニーズと、情報は得られるようになったが、どのように建築家にアプローチしていいかわからない、という建て主のニーズをマッチングさせる場として、住宅コンペサイトははじまった。
ハウスコンペが軌道に乗り出すと、それを模倣するサイトがいくつも現れた。サイトを立ち上げたものの、建て主も建築家も集まらずに立ち消えになったものもあるし、ハウスコンペの建築家リストをまるまる転用して勝手に登録建築家数としてメールに返信しなければ了承したものとみなすなんてやり方をして体裁を整え、テレビ番組とタイアップしたり、うまく立ち回ったところが生き残り、本家を凌ぐまでになっている。
現在(2006.12)ある主要なものは3つ。元祖ハウスコンペは慶応義塾系起業カヤックと提携、取り込まれる形で個人運営を脱却、施工関連を外し、初心にもどって建築家と施主の出会いの場をコンペにとらわれず追求しようとしている。当初、設計者は年代ごとの参加料(二十歳代二千円、三十歳代三千円等)だったものが、現在は年会費¥10,500、成約料¥105,000というビジネスモデルになっている。
Weekend Homesは、東日本ハウス(05の有価証券の虚偽記載で200万円の課徴金、06赤字)の営業ツール的にスタートしたと記憶している(現在の大株主は細田工務店)が、ビジネスとしてはよくまわっているようだ。施主から建築費の10%を設計料、63万をコーディネート料として取り、契約の窓口となって、設計料の2割を建築家から天引き、さらに提携工務店や各地のフランチャイズからも入り、最近は工法を限定することでパテント料も入るようだ。8%の設計料はかなりきついと思うが、仕事のない建築家は足下を見られていて、ないよりは安くても実績を作った方がいいと考え参加する。建築家から見れば設計施工システムの下請け的で独立した本来の職能を発揮できるとはいいがたいが、完成したものは建築家的テイストに仕上がっているものが多そうだ。
OZONE家サポは、施主、建築家、工務店、ハウスメーカーからまんべんなく手数料を徴収するビジネスモデルになっている。建築家の登録に事例数や親族以外からの推薦状などハードルを設けている。(運営母体は東京ガス)
施主の不安をいかに解消するか?という視点で、建築家の実績を評価したり、プロジェクト全体のコーディネートを打ち出したり、工法を限定したりといったサービスの差異と運営体の最もらしさが見られる。大企業であることや名前が知られていること、そのような資本がバックにあることに安心を求める人は意外に多い。組織が大きく顧問弁護士などかかえていたら逆にトラブルなどもみ消されてしまうこともあるだろうに。
ハウスメーカーや工務店に頼むのではなく、建築家に頼むということは、設計と施工を分離することで、工務店の選択を自由にし、相見積りで競争させ、図面通り工事が行われるよう監理したい、という意味があるが、さらに建築家を管理するコーディネーターまで求めるニーズが生まれていると言える。ではそのコーディーネーターは誰が管理するのか?どの部分に信頼のベースを置くべきなのか?多様な住宅発注の選択肢があるということはいいことではあるが。
本来は、これだけ情報過多の時代、自身で設計事務所を調べ、会い、話を聞いてみて、ここぞと思う人と計画を進めてみて、どうも違いそうだと思ったら次の候補に当たるというのが健全な発注なのではないかと思う。中にはコンペサイトに頼らずに自身で数人の建築家に声をかけて自主コンペをする人もいる。ある程度目利きとなれるくらい施主も勉強しないといけないし、それがどのくらいでき、建築にこだわりを持てるかで、どのような方式を選択するかが決まって来る。いずれにしても信頼できるキーマンと出会うこと、信頼を築くことが家づくり成功のポイントである。建った後もメンテナンスはずっと続いて行くわけだから。
以下に3つのコンペサイトの基本データ比較をまとめておこう
Housco(旧ハウスコンペ)
http://www.houseco.jp/ ・完成/開催数:129/193 決定率66.8% 参加建築家:956名 提出案:4,052案
プレ募集 7/56 12.5%
・登録建築家数:1,590名、建築作品画像:12,086
・建て主費用 :無料、op=現地調査会>事務局手数料として15,000円+交通費
・建築家費用 :登録無料、参加年会費¥10,500、成約料¥105,000
・提出物 :A4-5枚以内+プロフィール1枚をPDFデータ又は書類で送付
・工務店費用 :項目なし
・開始・運営 :1997.2.26ハウスコンペ、2005.3.1ハウスコとしてリニューアル
桑村武志個人運営→面白法人(株)カヤック(本人継続)
Weekend Homes
http://www.weekend-homes.com/・完成/開催数: /556?
・登録建築家数:1700
・建て主費用 :設計監理料=建築費の10%+プロデュース料63万円
・建築家費用 :登録参加は無料? 設計報酬は8%で、2%はウ社のアレンジ料
ウ社が契約窓口
・提出物 :A3-3枚
・工務店費用 :不明 審査あり
・開始・運営 :2000.5 ウィークエンドホームズ社
(主要株主:森本 剛民、細田工務店、大塚家具)
OZONE家づくりサポート
http://www.iesapo.jp/ ・完成/開催数:年間100件? 事例5/2006,25/2005,32/2004,21/2003
・登録建築家数:400 、工務店120社、住宅メーカー16社
・建て主費用 :建築家コンペ¥315,000、ひとりコース¥252,000、工務店¥231,000
土地探しサポート¥21,000、建物現況調査¥105,000円(標準料金)等
・建築家費用 :登録料¥31,500
・工務店費用 :新規登録¥105,000/年会費¥210,000
・開始・運営 :2000- 株式会社リビング・デザインセンター
ティージー・エンタープライズ(株[東京ガス100%出資]